BAD & BAD【Ⅱ】
わざと、物騒な想像をしないようにした。
落ち着こうとする度、焦りが滲み出る。
『声をかけようとしたら、知らない男に幼なじみの1人が殺られて……』
「1人?どっちだ?」
『えっと、長髪の方っす!あの、総長を小馬鹿にしてた、あいつっす!』
「……幸珀、か」
幸珀を倒せる奴なんて、俺は1人しか知らない。
心拍数が上がっていった。
『それで、俺は、助けようと臨戦したんすけど瞬殺されて、総長の幼なじみを連れ去っていく男を尾行することもできなくて……』
「なあ」
『はい、なんすか?』
「その、知らない男って、どんな奴だった?」
聞かなくても、わかっていた。
だけど、実際に聞かないと、信じられなかった。
心の隅で、どうかあいつではないようにと、願っていた。
『右側が長いアシンメトリーの髪型をした、背の高い、すんげぇ美形の男っす!』
欠片程度の願いは、いともあっさり砕かれた。