BAD & BAD【Ⅱ】
また、兄貴が幸珀を連れ去ったのか?
また、俺は幸珀を守れなかったのか?
身体の底から憤怒が沸き起こって、ワナワナと震えた。
どうして俺は、幸珀のそばを離れてしまったんだ。
俺がもっとちゃんとしていれば……っ。
『総長?』
銀の声で、正気に戻った。
呼吸が思ったより乱れていて、ふぅ、と息を吐いた。
「真修は?そこにいんのか?」
『いえ、真修さんは知らない男についていきました』
え?
ついていった?
兄貴が真修の同行を認めたのか?
いや、兄貴はいつも、幸珀と2人きりになりたがっていた。それなのに、幼なじみであろうと、他の男を連れて行くとは想像できない。
どういうことだ?
兄貴にとって、真修にとって、互いはどんな存在なんだ?