BAD & BAD【Ⅱ】
黒龍のたまり場の前に停めてあるバイクに跨って、神雷のたまり場に急いだ。
黒龍のたまり場と神雷のたまり場は結構距離が近くて、いつもは歩きで移動しているのだが、今回は緊急事態だ。
エンジン音を盛大に鳴らしながら、バイクを走らせていった。
風を感じていたら、ふと先週の火曜日のことを思い出した。
屋上でサボってる幸珀が心配になって、屋上に行こうと階段を上っていたら、最悪なことに兄貴と出くわしてしまったんだ。
その時、兄貴は言った。
『幸珀は僕のものだよ。誰にも渡さない。幸珀の彼氏にも、お前にも』
あれは、宣戦布告、だったのだろうか。
俺が言い返す前に兄貴は去ってしまったけれど、俺だってそれなりに覚悟を持っているんだ。
兄貴なんかに、幸珀は渡さねぇ。
すぐに洋館に到着した。
バイクを下りて、乱暴に扉を開ける。
ホールにいた奴らが、一斉に俺に視線を向けた。
「おっ、朔じゃん!いらっしゃーい。ねぇねぇ、僕の前髪どう?キマってる~?」
「んなこと、今はどうだっていいんだよ!」
弘也の髪色や前髪が変わってるとか、気にしてる暇はねぇんだ。