BAD & BAD【Ⅱ】




「銀が連絡をくれたんだ。黒龍のたまり場の近くで、幸珀が俺の兄貴に攫われて、真修は兄貴について行ったって」


「それって、誘拐ってことか?」



兄貴の本性を知っている鷹也が、目を丸くして問いかけてきた。



「誘拐みてぇなもんなのかもな」



兄貴がどうやって幸珀を攫ったのかはわからないから何とも言えないが、おそらく誘拐に近い。


どうしてこうも、兄貴のやり方は薄汚いんだろう。



兄貴はいつだって、俺の心臓をえぐってくる。




「朔の兄貴なら、心配ねぇんじゃねぇの?」



対照的に、兄貴に会ったことがない桃太郎は、訝しんでいる。



普通、そう思うよな。


……でも、心配しかねぇんだよ。



俺の兄貴には、一般的な「兄」の姿は当てはまらない。




「俺の兄貴はさ、狂ってんだよ」


「狂ってる?」


「幸珀が好きで好きでたまらなくて、幸珀を手に入れるためなら手を血に染めるのもいとわない」




そういう、愚かな男なんだよ。



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