BAD & BAD【Ⅱ】
大嫌いだ。
あの事件のあった日から、ずっと。
「だけど、幸珀は強ぇし、きっと大丈夫だって思いてぇけど……っ」
「大丈夫じゃ、なさそうだね」
励まそうと不器用な笑顔を浮かべた京が、やや項垂れる。
大丈夫だったら、どれだけよかったか。
俺がもっと強かったら、兄貴がもっと弱かったら。何度もそう嘆いては、現実に打ちのめされてきた。
「兄貴は、幸珀と同等くらいの強さなんだ。俺はもちろん、幸珀も、兄貴に勝てた回数は数えられる程度だ」
「そんな強ぇのか、そいつ……!」
剛が、息を呑む。
皆は幸珀の強さを認めていたからこそ、衝撃を受けていた。
「今までの悪夢は、これの兆候だったのか……」
凛がこぼした呟きを、誰の耳も拾うことはできなかった。
「2人を探すのを、手伝ってくれないか」
「手伝うに決まってるじゃん!」
「当たり前だろ」
京と凛が、前のめりで返事を返してくれた。