BAD & BAD【Ⅱ】
会話は途切れて、沈黙が続いた。
私は小さく、ブランコをこいだ。
2人きりの公園に、ギィギィ、軋む音がゆったり響く。
さすがに私でも、善兄の悩み事の内容まではわからない。エスパーじゃないんだから当然だ。
でも、善兄が秘密にしたかったら、そうしていいよ。
私は相談してほしくて、隣にいるんじゃない。
ただ、そばにいたいだけ。
善兄が悲しんでいるというのに、1人にさせられるわけがない。
ほっとけないんだ。
善兄がここまで悩んでる姿を見るのは初めてだから、余計に。
私じゃ力不足かもしれないけど、善兄の抱いてる悲しみを少しでも減らせられないかな。
ふと視線を持ち上げると、水彩のような空を背景に、桜の木がそよいでいた。
儚く散っていく桜に、目を奪われていたら。
『幸珀、ありがとう』
隣から穏やかな声が聞こえて、心が安心で包まれた。
よかった。落ち込んだ気持ちがちょっとは失くなったみたいだ。