BAD & BAD【Ⅱ】
私もつられて、桜を見つめる。
ひらりひらり、と可愛らしい花びらが風に運ばれていく。
『僕ね、さっき、』
心なしか、善兄の声はややかすれていた。
花びらが、視界の隅を横切る。
『秘密を、聞いちゃったんだ』
ぎこちなく話し始めた善兄の横顔は、今にも消えてしまいそうなくらい綺麗だった。
『秘密……?』
『家に帰ってリビングに行ったら、早目に仕事を終えて僕より先に帰ってきてた両親がいて、そろそろ僕に秘密を打ち明けようかって話をしてたんだ』
『それを盗み聞きしたの?』
『悪く言えば、そうかな』
俯いた善兄に、『そっか』とだけ呟いた。
もっと言葉を選べばよかった。私のバカ。
『偶然秘密を知って、思わず逃げてきちゃったんだ』