BAD & BAD【Ⅱ】
善兄は私に対してはよく笑ってくれる。それは、朔よりも真修よりも、私を1番可愛がってくれてるからなんじゃないのかな。だったら、いいな。
『じゃあ、幸珀にだけ特別に教えてあげる』
最初から、教えてくれるつもりだったんでしょう?
善兄は優しい。
その優しさが、より一層善兄を苦しめている。
『僕、養子なんだって』
『え……?』
怖がってた割にはさらっと秘密を明かした善兄が、なぜだか泣いているように思えてならなかった。
実際に涙を流してはいないのに。
お願い。
桜みたいに、散ってしまわないで。消えてしまわないで。
黙って手を伸ばして、善兄の手を握り締めた。
『幸珀?』
返事はせずに、ただひたすらに手を握り続けた。
独りで、泣かないで。
『……今隣にいるのが、幸珀でよかった』
そっと握り返した善兄の手は、こ刻めに震えていた。