BAD & BAD【Ⅱ】
『母さんと父さんの本当の子どもじゃないって知って、……なんていうか、すごく、驚いた』
辛いとか寂しいとか、もっと様々な感情がこみ上げてきたはずなのだろうけれど、
驚いたの一言しか口をついて出なかったのは、未だに取り乱しているからだ。
喉につっかえて、飲み込まれた繊細な感情は、今もなお善兄の中で渦巻いている。
『僕の本当の母親は、母さんの親友だったんだって』
『その人は今どうしてるの?』
『事故で亡くなったらしい。父親はわかんない。最初からいなかったのかな』
善兄の本当の両親は、もういないんだ。
それで、いちごさんが善兄を引き取ったのか。
善兄が、養子……。
善兄と朔は本当の兄弟じゃなかったんだ。
まだ実感が湧かないな。
露ほども疑念に抱いたことがなかった。
それは、善兄も同じだと思う。だからこんなに、悩んでいるんだ。
『今の両親が本当の両親じゃなくて、本当の両親もいないってわかって……急に、どうしようもなく、孤独を感じたんだ』