BAD & BAD【Ⅱ】
『でも養子だと思うと、僕はここに居ていいのか、僕は独りなんじゃないかって考えちゃって、つい遠慮しちゃいそうになるんだ』
『居ていいに決まってんじゃん!』
若干怒りながら、即答する。
善兄、全然わかってない。
そんなこと、考えるだけ無駄。考えなくても答えは出てるよ。
『善兄がいなくなったら、皆どれだけ心配すると思ってんの』
『え?』
『まずいちごさんがテレビをジャックして、全国に善兄の捜索を頼むでしょ?そんないちごさんを渡部パパがなだめながら、近所の人に片っ端から連絡する。朔は警察に捜索届を出した後、文句言いながら学校サボってめっちゃ探す』
『えっと……?』
善兄がキョトンとしてる。
絶対、こんな感じになるに決まってるよ!
いくら善兄が養子という関係性に囚われて、遠慮しても、きっと善兄のことが大好きな皆はその意識をもぶち壊して、善兄の内側に問答無用で踏み込んでいく。
『渡部家は、世界一周してでも善兄を必ず探し出すような……そんな、誰もが羨むくらい仲のいい家族だよ』
善兄が疎外感を感じるところなんか、ひとつもない。
いちごさん達は朔と善兄を、溢れんばかりに愛してる。
善兄の“母親”はいちごさんで、“家族”は渡部家。それは間違いない事実だよ。