BAD & BAD【Ⅱ】
『善兄』
呼びかけに応える前に、善兄をギュッと優しく抱きしめた。
ゆらり動いたブランコが、鈍い音を鳴らす。
『今までもらってきた愛を、愛する気持ちを、忘れないで』
今、どんな気持ち?
もう、悲しみは消えた?
もしもまだ悲しいなら、私が秘密の共有者になった記念に、悲しみを温もりに変えてあげる。
でも完全には無理だから、家に帰ったら、家族に残りの悲しみを取り除いてもらってね。
大丈夫。
不安にならないで?
今までと同じ……いやそれ以上の愛を、これからも注がれるはずだから。
『幸珀』
『ん?』
『ありがとう』
善兄はそう言うと、私の腰に腕を回した。
抱きしめ返してくれたのは嬉しいけど、ちょっと照れくさい。