BAD & BAD【Ⅱ】





『善兄』



呼びかけに応える前に、善兄をギュッと優しく抱きしめた。


ゆらり動いたブランコが、鈍い音を鳴らす。



『今までもらってきた愛を、愛する気持ちを、忘れないで』



今、どんな気持ち?


もう、悲しみは消えた?



もしもまだ悲しいなら、私が秘密の共有者になった記念に、悲しみを温もりに変えてあげる。


でも完全には無理だから、家に帰ったら、家族に残りの悲しみを取り除いてもらってね。



大丈夫。

不安にならないで?



今までと同じ……いやそれ以上の愛を、これからも注がれるはずだから。




『幸珀』


『ん?』


『ありがとう』



善兄はそう言うと、私の腰に腕を回した。


抱きしめ返してくれたのは嬉しいけど、ちょっと照れくさい。



< 561 / 730 >

この作品をシェア

pagetop