BAD & BAD【Ⅱ】




足がもう限界で立っていられなくなって、朔を抱きしめたままズルズルと地面にへたりこんだ。


朔のお腹に顔をうずめて、泣きじゃくる。




『おい、ちょ、幸珀!』


『ひっく、……っ、ぜ、ぜん、にいに……』


『……え?』


『善兄、……に……っ』




枯れ果てた声しか、出せない。


それでも、朔は真剣に耳を傾けてくれた。



『ふ、っ……く、鎖で縛られて、閉じ込められて……』


『兄貴に、監禁されてたのか?』


『……うぅ、』



こくん、と弱々しく頷く。


顔を見なくても、朔が殺気立っているのは感じ取れた。




『それで、なんとか自力で、逃げてきた……けど……っ』


『もういい』


『うっ、……ひっく、っ……』


『わかったから、もう、何も言うな』




そう言って、私の話したことを信じて、私の背中に手を添えてくれた。



< 589 / 730 >

この作品をシェア

pagetop