BAD & BAD【Ⅱ】
『忘れてないよね?』
『……い、や』
朗らかに微笑む善兄に、恐怖しか抱けなかった。
どうして、震えたくないのに震えてしまうんだろう。
どうして、善兄に触れられると、全身を支配されているように感じるんだろう。
どうして、弱さが浮き彫りになってしまうんだろう。
私は強いはずでしょう?
『縛り付けたいほど、僕が幸珀を愛してることを』
私には、無理だよ。
私に善兄の想いは、重すぎる。
善兄の固執した愛情を受け止められない。
贈られているだけで、こんなにも苦しいのに。
『触らないで』
『幸珀』
『名前を呼ばないで!』
私の叫びに対応して、朔が善兄の足を蹴った。
そのおかげで、善兄の手が放れる。