BAD & BAD【Ⅱ】




『忘れてないよね?』


『……い、や』



朗らかに微笑む善兄に、恐怖しか抱けなかった。



どうして、震えたくないのに震えてしまうんだろう。


どうして、善兄に触れられると、全身を支配されているように感じるんだろう。


どうして、弱さが浮き彫りになってしまうんだろう。



私は強いはずでしょう?



『縛り付けたいほど、僕が幸珀を愛してることを』



私には、無理だよ。



私に善兄の想いは、重すぎる。


善兄の固執した愛情を受け止められない。



贈られているだけで、こんなにも苦しいのに。




『触らないで』


『幸珀』


『名前を呼ばないで!』



私の叫びに対応して、朔が善兄の足を蹴った。


そのおかげで、善兄の手が放れる。



< 594 / 730 >

この作品をシェア

pagetop