BAD & BAD【Ⅱ】





『やっぱり、本当なんだな。兄貴が、幸珀を……』



私の反応で、確信を持った。


義弟に怒りの矛先を向けられた善兄が、フッと目を細める。



『本当はもっと2人きりでいたかったけど、今日は我慢するよ』



善兄が、私の頭をポンポン撫でる。『抱きしめるのも我慢してあげる』と言いながら。



『っや、めて』



気持ち悪い。

殺気と憂鬱と警戒が、私の中の嫌悪感を増幅させた。




『またね幸珀』



善兄は手を振って背を向けたが、『あ、そうだ』と顔だけを振り返らせた。




『今日は幸珀が疲れてるようだから許してあげるけど、次また朔が幸珀をおぶってたら、許さないから』


『あ、兄貴、な、に言って……っ』


『幸珀は僕のものだよ』




違う。

私は誰のものでも、ない。



朔を威嚇して、今度こそ去って行く善兄の後ろ姿にはまだ、殺気が波を打っていた。


数秒間、下手な呼吸しかできなかった。



< 595 / 730 >

この作品をシェア

pagetop