BAD & BAD【Ⅱ】
『やっぱり、本当なんだな。兄貴が、幸珀を……』
私の反応で、確信を持った。
義弟に怒りの矛先を向けられた善兄が、フッと目を細める。
『本当はもっと2人きりでいたかったけど、今日は我慢するよ』
善兄が、私の頭をポンポン撫でる。『抱きしめるのも我慢してあげる』と言いながら。
『っや、めて』
気持ち悪い。
殺気と憂鬱と警戒が、私の中の嫌悪感を増幅させた。
『またね幸珀』
善兄は手を振って背を向けたが、『あ、そうだ』と顔だけを振り返らせた。
『今日は幸珀が疲れてるようだから許してあげるけど、次また朔が幸珀をおぶってたら、許さないから』
『あ、兄貴、な、に言って……っ』
『幸珀は僕のものだよ』
違う。
私は誰のものでも、ない。
朔を威嚇して、今度こそ去って行く善兄の後ろ姿にはまだ、殺気が波を打っていた。
数秒間、下手な呼吸しかできなかった。