BAD & BAD【Ⅱ】
朔がゆっくり、私の家へと歩き出す。
会話はなかった。
頭上で眩く踊っている星達は、私を慰めてくれているようだった。
家に到着した。
私は朔の背中から降り、扉を開ける。
『ただいま』
『幸珀……!』
玄関先でずっと待っていてくれていたのか、お母さんがすぐに私に駆け寄ってきた。
お母さんの顔、真っ青だ。
想像以上に心配されていて、また泣きたくなった。
『遅くなってごめん』
『無事でよかったわ』
ギュッと抱きしめられた。
ちょっと怖かった。朔は平気だったけど、お母さん相手でも抱きしめられたら束縛だと勘違いして、嫌いになっちゃうんじゃないかって。
でも、そんなこと悩まなくてもよかったみたいだ。
全然怖くない。
縛られている感覚も、ない。
とても、温かい。
お母さんの匂いだ。