BAD & BAD【Ⅱ】
怖くなるのは、監禁した犯人の善兄だけのようで、他に影響はなさそうだ。
お母さんに抱きしめられて、心の底から安堵する。
私、家に帰ってきたんだ。
『お父さんは?』
『幸珀を探しに行ってるわ。帰ってきたって連絡しないと』
そっか、お父さんも探してくれてたんだ。
仕事で疲れているだろうに……。
帰ってきたら、ちゃんと『ごめんね』『ありがとう』って言おう。
『幸珀、こんな時間まで何してたの?』
お母さんは私の両肩を優しく掴み、じっと見つめてきた。
玄関先に置いてある小さな時計にチラリと一瞥すると、時刻は7時半を過ぎていた。
いつも真っ直ぐ家に帰っている私にしては、十分遅い時間だ。
『えっと……』
無意識に、右手首を左手で、長袖の制服の上から握る。
その仕草に違和感を覚え、お母さんが強引に私の左手を剥ぎ取った。