BAD & BAD【Ⅱ】
『そ、そうだ、警察に連絡を……』
そう思い立ったお母さんが、混乱しながら、電話のあるリビングに移動しようとした。
警察?
このことが、警察沙汰になるの?
『……お母さん、や、やめてっ!』
『幸珀?』
『警察に連絡しないで!』
ようやく真っ直ぐに声を、まともに投げかけられた。
まだ、か細いままだけれど。
お母さんがこちらに戻ってきて、私の顔がよく見えるようにしゃがみこんだ。
『どうして?犯人が野放しになっているのは怖いでしょ?』
『でも、それ以上に、自由を奪われるのは嫌なの』
犯人を教えたら、警察に通報したら、どうなる?
被害者である私は事情聴取のために、今回の件を掘り下げ、監禁されていたことを思い出さなくちゃいけない。
善兄は捕まるのを嫌がって、再度監禁するかもしれない。それに、そう簡単に捕まってくれるほど、浅はかな奴じゃない。