BAD & BAD【Ⅱ】
そして、その日から、日常は変化し始めた。
変化といっても、ほんの少し。
善兄が嫌いになって、ついでに束縛も嫌いになって。
そういう、私の「嫌い」が影響した程度の変化だ。
善兄が抱きつき魔になって、執拗に好き好きアピールしてきて、あわよくば2人きりになろうと密室へ誘導してきたり。
そんな善兄を嫌って、朔が追い払おうと健闘したり。
私は私で、善兄にそこまで怯まなくなるくらい精神を鍛え、冷たくなり、強くなろうとした。
変化したのは、これだけじゃない。
――警察沙汰にしないと決めた後。
お母さんがお父さんに、私が家に帰ってきたと連絡をした。
朔が自分の家に帰っていった直後に、お父さんが家に戻ってきて、私の無事を喜んだ。
『今日はもう寝なさい』
お父さんに優しく言われ、私は素直に寝床につくことにした。
でも、身体に恐怖が残っていて、うまく寝付けなかった。
眠くなるまで、お母さんとお父さんのいるリビングにいようと部屋を出て、階段を下りていった。