BAD & BAD【Ⅱ】
階段を下りきると、リビングから声が聞こえてきた。
『そうか、警察に連絡しなかったのか』
『ええ。今回の事件で、あの子にとっての自由の価値が変わってしまったみたい』
どうやら、私の話をしているらしい。
とても割って入っていける空気ではなくて、階段近くで話を盗み聞いていた。
『過保護でいすぎるのも、あの子の自由を奪うことになるのかしら』
お母さんの寂しそうな声色に、胸が締め付けられる。
ならない、とは、言えない。
自分でもわからないんだ。
現時点では、心配されて嬉しいと感じられている、けど。
いつか、その心配も私を縛り付けてしまうのかな。嫌だな、悲しいな。
『……方針を、変えるか』
少し悩んで、お父さんは決断した。
『今までは子どもだからと多くのルールを決めて守らせてきたが、それが幸珀の重荷になってしまうなら、もっと伸び伸びと自分の思うがままに過ごさせてやるのが1番なのかもしれない』
『放任主義になるってこと?』
『ああ、そういうことになるな』