BAD & BAD【Ⅱ】
ジャラ……、と重めの音が頭に響く。
眠気が遠ざかり、意識が戻ってきた。
おぼろげに視界を開いていくと、善兄の姿が最初に映りこんだ。
「おはよう、幸珀。よく眠れた?」
「おかげさまで」
善兄に嫌味は通じない。ちくしょう。
善兄の手が、私の後頭部に回る。
拒否しようとしたら、腕を動かせない。
さっきから腕が上に持ち上げられていて、立ち膝状態でいなくてはならないので非常にしんどい。
もしや、と目を頭上に持ち上げて、原因を探れば。
予想通り、天井付近に吊るされている棒から垂らされた鎖で、私の手首を縛っていた。
身動きの取れない私はどうすることもできず、善兄にされるがままヘアゴムを外された。
さらり、と髪が落ちる。
「おろしてた方が、好きだな」
善兄に好きだと思われなくていいよ。
今度からずっと髪は結んでいようかな。