BAD & BAD【Ⅱ】
すると、善兄のポケットから着信音が鳴った。
「またか」
スマホを取り出し、不機嫌そうに画面を眺めながら即効電話を切った。
また?
善兄に何度も電話をかけてる人がいるの?
誰からだったんだろう。
「出なくてよかったの?」
「幸珀との時間の方が大事だからね」
ツー、と善兄の指先が、私の輪郭をなぞった。
気持ち悪い。虫唾が走る。
全力で顔を歪めたら、善兄は柔らかく微笑んだ。
本当に、善兄のツボはわからない。異常だ。
「今度はこんな広い場所に、私を監禁するの?」
「そうだよ。本当は狭い教室の方がよかったんだけど、ここはやりやすいからね」
輪郭を逸れた指先が、黒髪をくるくるいじる。
やりやすいって、「殺りやすい」って意味じゃないよね?
確かにここは展望しやすいから、誰かが来たらすぐわかるだろうけどさ。