BAD & BAD【Ⅱ】
「3年前のようには、させない」
善兄に抱きしめられたり触れられたりする度に束縛されているように感じるのも、善兄を必要以上に嫌うのも、あの事件で善兄に壮絶な苦しみを植えつけられたことが、記憶だけでなく精神に染み込んでいたせい。
一種の、自己防衛本能。
「幸珀は3年前のこと、全部憶えてる?」
「……忘れたい」
ボディーガードがいないせいか、恐怖で本音が出てしまった。
その自己防衛本能とやらで、記憶喪失にでもなりたかった。
「僕は、忘れたことないよ。3年前幸珀が何を言って、どんな表情をして、どんな仕草をしたのかも、全部憶えてる」
今すぐ善兄の頭を鈍器で殴って、記憶を消してやりたい。
その天才的記憶力と頭脳を、もっと他の方面に使えよ。
「幸珀との思い出は、どれもかけがえのない宝物だからね」
「私が逃げたことも、善兄にとっては大切な思い出なの?」
「もちろん」