BAD & BAD【Ⅱ】




否定しようとした瞬間、善兄がさらに距離を詰めてきた。



ぶつけたかった言葉は空を切って、長い下まつ毛がよく見えるくらいの至近距離で、善兄と視線が絡む。



このまま近づかれたら、キスしちゃう。

怖い。近づかないで。



唇が当たる、寸前。



「……ふふ」



善兄が笑みをこぼしながら、ピタリと止まった。


無意識に息を止めていた。



善兄の唇は上に移動して、私のおでこにチュッとリップ音を立てながら口づけをする。



「っい、」

やだ。


おでこでも、嫌なもんは嫌だっ!!



戦慄しながらも殺伐としている私を、善兄は幸せそうに愛でた。




唇を重ねられたことは、一度もない。


それは、善兄なりに相思相愛になったらキスしようとか考えているからなのか、私を穢したくないからなのかは不明だ。



私としては、非常に助かってる。善兄とキスされた日には、口をなくして、クチナシ女になってやる。





――プルルルル。



ふと、また着信音が鳴り響いた。


また、善兄のスマホだ。同じ人からだろうか。



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