BAD & BAD【Ⅱ】
招かざるオリオン
「俺、もう逃げないよ」
迷っていた時間は、おしまい。
手の甲で涙を拭った顔つきが、凛々しくなる。
「今度こそ、幸珀を助ける……!」
勇ましくてたくましい、真修の決心。
私は朗らかに、口元を緩めた。
「頼りにしてるよ、真修」
一緒に、善兄の砦から抜け出そう。
善兄がここにいない、今が絶好のチャンスだ。
「じゃあ、とりあえず、この鎖外してくれない?」
「わかった!」
真修は近くに寄って、私の手首に巻かれた鎖を解こうとする。
しかし、ガチャガチャとうるさい音が鳴るだけで、一向に鎖は解かれない。
「ちょっ、何やってんの?」
早くしないと、善兄来ちゃうよ!