BAD & BAD【Ⅱ】
誰が善兄とイチャイチャできるか。
たとえ拘束を解かれて、スイーツを大盤振る舞いされても、お断りだね。
「……急いで邪魔者を始末しないと」
脳内で、警報が轟いている。
そんなに私と結婚したいのか、今日の善兄は本気でやばい。3年前の比じゃない。
善兄にとっては、私が逃げることより、第三者に妨害されることの方が癇に障るらしい。
「真修、ここから離れて!」
「え?」
「今すぐ体育館を出て!」
発声を荒げて、撤退を促す。
今は私より、自分の身の心配をして!
「で、でも、まだ鎖が……」
「そんなのいいから!!」
怖くて仕方なくても、大丈夫だと言い張れる。
独りじゃないだけで、不思議と平常心でいられる。
つい先程まで、心からそう確信していた。
――けれど、善兄が戻ってきて、それは一時の浅ましい幻影だったのだと思い知らされる。