BAD & BAD【Ⅱ】
何が大丈夫だ。何が平常心でいられるだ。
まやかしを成長とはき違えて、バカみたいだ。
余裕ができたからだとか、私が強くなったからだとか、そんな大層なものじゃない。
ただ、善兄がその場にいなかったから、畏怖が小さくなっていただけだ。
これっぽっちも大丈夫なんかじゃない。
平常心は恐怖心に食い散らされた。
調子に乗って、自分を見誤るな。
今の私は、善兄より、弱い。
大嫌いな天敵を相手にしているのに、ずっと冷静でいられるわけがない。
それを身をもって知っている上で、私は……私達は、善兄の支配をぶち壊したいんだ。
「まずは、寝返った真修くん」
「っ!」
「僕の幸珀から、離れてくれる?」
善兄の殺気が刺々しくて、抗う気力を吸われていくようだ。
体育館全体が、圧迫されている。
「は、離れません!」
真修は気圧されながらもはっきりと拒み、鎖の解除を再開した。
どうして?
真修にだって、今の善兄の危険さはわかるでしょ?
なのに、どうして私を優先するの?