BAD & BAD【Ⅱ】
善兄の独占欲が、肥大化している。
電気の点いていない体育館に伸びた影に、不穏な予感が隠れされていた。
ステージ手前まで来たところで、善兄は悠長に立ち止まった。
「真修くん」
憎悪を孕んだ呼びかけに、真修は顔を上げざるを得ない。
善兄、何をするつもりなの?
「反対意見は、一切認めないよ」
「俺はなんと言われようと……」
「10秒」
善兄は冷徹に遮って、そう一言呟いた。
10秒って、何の時間?
漂う静寂を、善兄の殺気が凍らせる。
「僕が10秒数えてる間に、ここから立ち去れ」
地を這う低音で発せられた、命令。
有無を言わせない迫力に、飲み込まれる。