BAD & BAD【Ⅱ】
善兄の目が据わっていく。
きっと、私の要求を考慮して、10秒の猶予を与えたんだ。
たった10秒。この時間の短さは、善兄の怒りと比例している。
「もし10秒経っても、真修くんがここに残っていたら」
そしたら、どうなるの?
そう聞きたくても、声が出なかった。
善兄が、悪魔のように笑っているせいで。
「コレで徹底的に殺っちゃうから気をつけて」
ポケットから取り出したソレに、私と真修は目を見開く。
え?ソレって……。
全身が恐怖で染まって、身の毛がよだつ。
「な、なんで、そんな物持ってるの?」
「幸珀がまた僕の手をすり抜けて逃げてしまって、僕のものじゃなくなったら悲しいなって思って、準備したんだ」
善兄の家族への憧れは、ソレすら用意させるほど狂っていたの?
「幸珀がいてくれれば、もう何もいらない。だから幸珀が奪われるならいっそ、幸珀を殺して、僕も死ぬ」
「や、やめてよ、殺すとか死ぬとかそんなの……っ」
「……って言いたいところだけど」
「へ?」