BAD & BAD【Ⅱ】




善兄の目が据わっていく。



きっと、私の要求を考慮して、10秒の猶予を与えたんだ。


たった10秒。この時間の短さは、善兄の怒りと比例している。



「もし10秒経っても、真修くんがここに残っていたら」



そしたら、どうなるの?

そう聞きたくても、声が出なかった。


善兄が、悪魔のように笑っているせいで。



「コレで徹底的に殺っちゃうから気をつけて」



ポケットから取り出したソレに、私と真修は目を見開く。



え?ソレって……。


全身が恐怖で染まって、身の毛がよだつ。



「な、なんで、そんな物持ってるの?」


「幸珀がまた僕の手をすり抜けて逃げてしまって、僕のものじゃなくなったら悲しいなって思って、準備したんだ」



善兄の家族への憧れは、ソレすら用意させるほど狂っていたの?




「幸珀がいてくれれば、もう何もいらない。だから幸珀が奪われるならいっそ、幸珀を殺して、僕も死ぬ」


「や、やめてよ、殺すとか死ぬとかそんなの……っ」


「……って言いたいところだけど」


「へ?」




< 649 / 730 >

この作品をシェア

pagetop