BAD & BAD【Ⅱ】
なんだ、タチの悪い冗談か。
そうだよね。
いくら善兄でも、命を捨ててでも愛を手に入れようとはしないよね。
「幸珀を傷つけたくはないから、幸珀を奪おうとする奴をぶっ殺すことにするよ」
「なっ……!?」
安堵した気持ちが、跡形もなく砕け散った。
ソレで、真修を傷つけるの?
善兄にとって、他人の命はどうでもいいものなの?
ひどいよ。最低だよ。
善兄に良心はないの?愛がそんなに大事?
「僕はね、天国や地獄より、やっぱり“ここ”で幸珀と結ばれたいんだよ」
善兄はソレ――まだ刃は出ていない折りたたみ式ナイフを指で器用に回して、空中に軽く投げた。
空中で、しまわれていた刃の部分が開かれる。
善兄の手が、ナイフの柄の部分を華麗にキャッチした。
「それじゃあ、カウントダウンを始めるよ」
ハッ、と我に返る。
善兄の非道さに屈服しかけてる場合じゃない。