BAD & BAD【Ⅱ】
10、9……と早速数えだした善兄に急かされるように、私は真修を説得し始めた。
「真修、早く離れて!」
「嫌だ!!」
真修は頑なにこの場を離れようとはしなかった。
善兄に殺されるかもしれないのに、どうして逃げてくれないの。
どうして、自分自身を守ろうとしないの。
「俺はもう二度と、誰かを見捨てたりしないって決めたんだ!」
覇気のある覚悟とは裏腹に、鎖を外そうとしている手はこ刻めに震えていた。
「絶対に逃げない。幸珀を、助けてみせる!」
ポタリ、と手の甲に雫が落ちてきた。
……真修、泣いてるの?
涙が出るほど怖いくせに、私を自由にしようとしてくれてるの?
「なんでここで頑固になっちゃうかなぁ」
小さな小さな囁きを、誰も聞き取ることはできなかった。
今逃げ出しても、見捨てたことにはならないのに。
優しすぎるよ、バカ。