BAD & BAD【Ⅱ】
鎖から腕を引き抜けないか試みる私をよそに、善兄が真修の背後に忍び寄る。
「ふらついてると危ない、よっ」
「わっ……!」
足を払われ、真修は体勢を崩されて床に倒れた。
その拍子に右足首を挫いてしまったらしく、痛そうに右足首を抑える。
「足首ひねったの?」
それに気づいた善兄は、右足首を抑える手ごと、足で容赦なく踏んづけた。
悲鳴になっていない悲鳴が、鎖を揺らした。
「これでもう、立てないね」
思う存分痛めつけた後、善兄は真修の上に跨り、確実に主導権を握る。
鎖に持ち上げられた腕の脇から2人の対戦状況を覗いても、善兄の背中しか見えず、真修がどんな顔をしているのかわからなかった。
だけど、これだけははっきりわかる。
真修が、危ない。
早く、拘束を免れなくちゃ。早く、真修の力になってあげなくちゃ。
早く、早く、早く……!
焦燥感に苛まれながら、手錠のように冷たい感触から解放されるよう、全力で踏ん張り続けた。