BAD & BAD【Ⅱ】
真修が鎖を少し緩めてくれたおかげか、なんとか左手だけは抜け出せた。
よっし。このまま右手も……。
「遺言は何かある?」
「……っ」
「ないんだね、わかったよ」
右手も引き抜ける時間は、どうやら残されていないらしい。
善兄は右腕で真修の首元を、右手で真修の肩をがっちり固定した。そのせいで、真修は身動きひとつ取れない。
ナイフを持つ左手が、徐々に振り上げられていく。
「じゃあね、真修くん」
鋭利なナイフの先端が躊躇なく、真修の額のど真ん中へ振り下ろされた。
待って。
殺さないで。
ナイフを止めて。
「やめて!!」
かすれた絶叫と共に、一心不乱に左手を伸ばした。