BAD & BAD【Ⅱ】




届け!届け!



願いは叶わず、善兄の背中まであと数センチというところで、左手は虚しく空を裂いた。



なんで、届かないの!


自分の非力さに打ちひしがれる。




やだ。


こんなのやだよ。




ねぇ。





「っ真修!!」



涙を目尻に溜めながら喚いた、その瞬間。



――バンッ!

勢いよく1番奥の扉が開かれた。



その音につられて、真修の脳を貫く寸前で、反射的にナイフが制止した。



「幸珀、無事か!?」



扉から入ってきたのは、汗だくの朔と師匠と凛だった。



もしかして、学校中を探し回ってくれてたのだろうか。


タイミング良すぎだよ。



来てくれて、ありがとう。




「案外早かったね」


「っ、兄貴てめぇ、真修に何しようとしてんだよ!」



左手にあるナイフに気づき、善兄と真修の形勢が何を意味するのか察した朔は、かっと熱くいきり立つ。



< 657 / 730 >

この作品をシェア

pagetop