BAD & BAD【Ⅱ】
届け!届け!
願いは叶わず、善兄の背中まであと数センチというところで、左手は虚しく空を裂いた。
なんで、届かないの!
自分の非力さに打ちひしがれる。
やだ。
こんなのやだよ。
ねぇ。
「っ真修!!」
涙を目尻に溜めながら喚いた、その瞬間。
――バンッ!
勢いよく1番奥の扉が開かれた。
その音につられて、真修の脳を貫く寸前で、反射的にナイフが制止した。
「幸珀、無事か!?」
扉から入ってきたのは、汗だくの朔と師匠と凛だった。
もしかして、学校中を探し回ってくれてたのだろうか。
タイミング良すぎだよ。
来てくれて、ありがとう。
「案外早かったね」
「っ、兄貴てめぇ、真修に何しようとしてんだよ!」
左手にあるナイフに気づき、善兄と真修の形勢が何を意味するのか察した朔は、かっと熱くいきり立つ。