BAD & BAD【Ⅱ】
ステージに駆け寄る朔を横目に、善兄は真修の首元から右腕を外し、上半身を起こした。
真修が弱まった苦痛に安心していたら、さっきダメージを食らったみぞおちに善兄の右肘が落とされた。
「ぅぐっ……!」
「真修くんをあの世に送るのは、後にしとくよ」
「今すぐ真修から離れろ、兄貴!!」
雄叫びが、上がる。
善兄は立ち上がり、手や指を使ってナイフをくるくる回しながら、3人の侵入者を軽視した。
「あっちを先に片付けたほうが良さそうだからね」
「っ、はっ、」
「それに真修くんは闘える状態じゃないし」
「……そ、んなこと、な……っ」
「痛みに悶えながら、殺されるのを待っててよ」
善兄と真修の会話は、私にしか聞こえなかった。
不敵な横顔に、戦慄する。
こんなに真修が苦しがっているのに、それでも善兄は自分の異常さに気づかないの?