BAD & BAD【Ⅱ】
体育館に、殺伐とした空気が充満していく。
心臓が激しく脈を打つ。
じっとして休んでる暇は、私には欠片もない。
恐怖で震える足で、ゆっくり立ち上がった。
鎖は未だに右腕を縛っていて、この場を動けない。
「僕との闘いを選んだこと、後悔しないといいね」
斜めに切り揃えられた前髪の隙間から覗く、鋭い瞳が薄黒く光る。
足が、すくむ。
でも、怖がってばかりもいられない。
私も、真修やあの3人を見習わなくちゃ。
「ほら、かかってきなよ」
「くっそ、なめやがって……!」
上から目線に手招きをする善兄に、朔は怒りを抑えきれずに先駆けて、勢いをつけて飛び上がった。
えっ、いきなりドロップキック!?
「僕より弱いくせに、威勢だけはあるよね」