BAD & BAD【Ⅱ】
なんでここに、善兄が……?
朔から帰省した知らせは受けていない。
善兄との邂逅は、あの監禁騒動以来だというのに、不思議と平静でいられた。
「久し振り」
善兄はうっすら微笑みながら、一歩私に近づいた。
思わず、一歩後ずさる。
「NINAって呼ぶな」
「幸珀?」
「それも却下」
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
「そもそも呼ぶな」
「それは無理」
恐怖は、少なからず心臓をざわついていた。
「何の用?」
そう強がれば、善兄は困ったように苦笑しながら、接近をやめた。
善兄の雰囲気が、ほんのわずかに柔らかいのは、気のせい?
「安心して、これ以上近づかないから」
「あんたに会った時点で安心できない」
「今日も冷たいね。そこも好きだけど」
「はいはい。で?わざわざこの街に来て、何の用なの?」
用件を尋ねてあげた私は、えらいと思う。