BAD & BAD【Ⅱ】
唄子ちゃんは一礼して、「ありがとうございました」と礼儀正しく感謝の気持ちを伝えてくれた。
頭を上げた唄子ちゃんの、私を見つめるまん丸な瞳が、いやに凍てついていたように感じた。
今のは、何?
気のせいなんかじゃない。
確かに、感じた。
唄子ちゃんの、冷え切った眼差しを。
あれは、他の誰でもない、私に対するものだった。
「う、唄子ちゃん、またね」
「さようなら、幸珀先輩」
別れを告げて家へと帰っていった唄子ちゃんに、手を振ることはできなかった。
さらりとなびく唄子ちゃんの金髪に反応して、心臓がやけに忙しなく動いていた。
「おい、いつまで踏んでんだ!?」
「あっ、ごめん。忘れてた」
「忘れてた!?ひどすぎだろっ」
「ごめんてば」
唄子ちゃんに気を取られて、頭からすっぽり抜けてたよ。
すぐにどかす予定だったんだけど、ずっと桃太郎のつま先に全体重のっけてグリグリしてた。てへっ。