BAD & BAD【Ⅱ】
「ていうか、なんで弘也の居場所を教えてやらなかったんだよ」
「考えてみてよ。今、唄子ちゃんに居場所を教えてあげたら、行きたいって言うに決まってるじゃん」
「そうだろうな」
「それで唄子ちゃんを引き連れてたまり場に行ったら、さらに騒がしくなって大変なことになるでしょ?そんなことになったら、たかやんの長い長い説教タイムが始まっちゃうよ?それでもいいの?」
「それは嫌だ!!」
「でしょ?だから教えなかったの」
教えちゃ、いけない気がした。
私の相棒の直感くんが、居場所を打ち明けることにストップをかけたんだ。
唄子ちゃんと大宮ツインズの相性は、おそらく最悪にさらに最悪を加えても足りないくらい、超超超最悪なんだろう。
それなのに、相容れてない不適合な奴らを引き合わせてしまったら、厄介なことになるのは明らかだ。
弘也とたかやんが、苦しげな表情をすることも。
だから、答えなかった。
……答えたくなかった。
弘也は洋館に居る、と教えてしまったあとで、面倒ごとに巻き込まれたら嫌だもん。
「それじゃあ、交番に行って、さっさと帰りますか」
「パトロール、まだ終わってねぇぞ」
「えぇー、もう終わりでいいじゃん」
「ダメだ!」
「ケチ。そんなんだから背が伸びないんだよ」
「身長関係ねぇだろうが!」
夜空に浮かぶ月の明かりが、ひどく柔らかくて。
私の鼓動を、ゆるやかに刺激した。