BAD & BAD【Ⅱ】
どきどきデスレース
「うわあ、すごーい!」
古き良き日本の伝統を感じさせる、大きなお屋敷を前に語彙力を失った私は、「すごい」ばかりを繰り返す。
うん、これは、すごいとしか言えないわ。剛の自宅並にすごい。
世界が違うというか、レベルが桁外れというか……とにかく、すごくすごい。
お屋敷を囲っている緑豊かな山の自然の効果なのか、心なしか清々しい気分だ。
「これまた、随分と立派なところだな」
「あ、もしかして……たかやん、こういうところに泊まるの初めてでちょっと不安?」
「ああ、そうだな。お前らがこんなすげぇ建物を汚したり壊したりしねぇか、すっげぇ不安だ」
「……うっ。そ、そうならないよう、ぜ、善処します」
な、なんだか、胃がキリキリしてきた。
たかやんがスマホで、正午過ぎの現時刻を確認しながら、無駄にプレッシャーをかけたせいだ!
周りにいる皆を見てみたら。
たかやんの心配が伝染して沈んでいた私をよそに、凛はいつも通りアイスを食べていて。
弘也と剛は、桃太郎をからかっていて。
重そうなリュックを担いでいる師匠は、真修や下っ端達とこのお屋敷の大きさに興奮していた。
皆のはしゃぎっぷりに、胃の痛みが増す。
善処しても、たかやんの不安が的中してしまった時は、全員で土下座しよう。弁償しろと言われたら、外国にでも逃げちゃおうか。