Catch me
「龍起様。」
突如かけられた声に振り向けば
燕尾服をビシッと着こなした
若い男が佇んでいた。
…コイツは確か…
「最近、父から
桐生社長の執事を
引き継ぎました。
ご挨拶が遅れました
ご無礼をお許しください。
さて、あちらで皆様
お待ちです。」
…ああ…そうだった。
とてもお世話になった男と
よく似た面持ちをしている。
彼は、パーティルームに
隣接する小部屋を示し、
視線だけで誘導した。
「なんだよ。…あれ?
お前らまで。」
扉を開け小部屋に入れば
うちの一癖も二癖もある家族と
わが社の参謀達が全員揃い、
好奇心に満ちた眼差しを
こちらへ向けていた。
「龍起、貴方、
結婚を考えている女性が
いらっしゃるそうじゃない。」
…ゲッ…
母親の台詞に
眉間がピクピクする。
誰だ!?喋ったヤロウはっ!!
…うちの奴は、全員真っ黒だ。
誰の仕業も有り得る話だ。
「あの子か?!あの子なのか?!」
カノジョと余りの接点の無さに
藁にも縋る思いで、あの日
プライドをかなぐり捨て
父親に頭を下げた事が
こんな形で我が身に
返ってくるとは。
あの日のオレ、クタバレ!!(涙)
「マジか!?連れて来いよ。」
「まあ!!あの龍起さんが?
…私も会ってみたいですわ。」
兄貴…義姉さん…
あんた達、この状況を
楽しんでるだろう…
ヤバイ…家族ぐるみで
追い込んできやがる。