あの夏をもう1度
あの夏をもう一度
『沙耶、ごめん別れよう』



約束していた夏祭り。


そこに現れた彼は
そうあたしに告げた。



『何言ってるの?冗談だよね!?』



あたしは彼にしがみついた。
みっともないと思った。


でも、どうしても好きだったから。
大好きだったから。



『ごめん、もう無理なんだ』



彼の瞳には輝きがなかった。



『どうして?昨日までそんなこと言ってなかったじゃん!』



あたしは泣いて彼をつなぎとめようとする。

いつだって
あたしが泣けば彼は抱きしめてくれた。


付き合い始めた日もあたしが泣いていた日だった。



『もう、涙拭いてやることも抱き締めることもできないから』



彼はそのまんま。
あたしに背を向けて歩いていった。


残ったのは惨めさだけだった。

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