零度の華 Ⅰ


下手に嘘は重ねられない


『不本意ではあるが、ウィッグをつけて入るか』


それなら見られる心配もなければ怪しまれる心配もない



人間が風呂に入ったかを確認するのに、視覚、聴覚と嗅覚が働く

そして、それが一番わかる部分は髪


特に長い髪だから良く分かる


ウィッグも洗うか

手間が掛かることとなるが見つかるよりマシか


裸になるとあたしは頭からお湯をかぶる


『それにしても大きすぎるだろ。温泉となんらかわりないじゃないか』



金持ちの組は違うなと一人関心していた


チャプンという音が反響し小さな音は大きな音となる

あたしはウィッグを外したまま湯につかる



あまり、ゆっくりできない



髪を乾かす時間もあるし、せっかく中に入ることができたんだ

興味が湧いてきた


ここを色々と見てみたい



「ハクちゃん、着替え持ってきたから置いておくね。服は洗濯するけどいいかしら?」


『ありがとうございます。すいません、お願いします』


「分かったわ」




< 174 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop