零度の華 Ⅰ
十分に髪を乾かした後はウィッグを乾かす
それをまたつけて終わりだ
廊下へと出てくると既に梟銀夜がいた
『わざわざ、待っていたのか?』
「勝手に動かれると厄介だからな」
あっそ、と冷たく返す
そんなことだろうと思っていた
梟銀夜が歩きだしため、あたしも足並みをそろえてついていく
足が止まり、目の前の引き戸をスライドさせた
中にいた組員は盛り上がっていた話をピタリと止めて、あたし達二人に注目する
視線が痛い
梟銀夜は気にせず座る
後に続いて隣に座ると同時に質問攻めをくらう
どういう関係なのか、あたしは誰か、何故ここにいるかという内容
興味津々な顔であたしに食いついてくる
厳つい顔ぶれの中には組とは無縁そうな奴も混ざっている
人は顔で判断できないのは自分が良く分かっている
それに案外、そういう奴ほど腕の立つ奴がいたりする
「雨月羽空。大した関係じゃねぇよ。ここには俺が連れてきた」
あたしの代わりに聞かれたことに答える
コイツ、家ではこんなに喋るんだな