零度の華 Ⅰ
準備をするにはまだ早い時間だ
燕(スワロー)が去り、再び二人だけの空間が広がる
「狼(ロウ)」
あたしの名を雲雀が呼ぶ
『何でしょうか、ボス』
雲雀のもとへゆっくりと歩いて近づく
必然的にあたしが雲雀を見下ろす形になる
「俺は一つ、お前に聞きたいことがある。ずっと疑問に思っていたことだ」
『それはなんですか?』
緊迫した空気が漂う
真剣な眼差しで思いつめた瞳(め)
気怠さを覚えながらも、その瞳(め)と向かい合う
「なぜ、俺だった?なぜ、ここに座ろうとしなかった」
あたしは今の場所を離れ、ソファーへと座る
一つの息を大きく吐いた
『そんなことか』
「俺にはそんなことじゃねぇ」
あたしは雲雀に目を合わせることなく淡々と話しを進める