零度の華 Ⅰ
亜紀との待ち合わせに遅れそうだったので急いで支度をした
××駅の前に行くと、亜紀らしい奴が立って携帯電話を弄っていた
随分と目立っているな
女の好奇の目が途絶えない
あたしも十分目立っているから何も言えない
あたしは亜紀に近づいた
『お待たせ』
ニコッと女らしくやって見せた
そのせいか亜紀はあたしを零(ゼロ)だと気づいていない
昨日の今日で女ということを理解できてないのか
『内野亜紀』
「……もしかして。……本当だったんですね」
やっと理解してくれたみたいだ
どうやら半信半疑だったようだな、あたしが女だったということを
「いいのですか?バラしてしまって」
あたしは亜紀に隠す必要はないと思い女だと明かしに来た
だが、素顔だけは見せてはおかない
『隠す必要ない。それより、ここじゃ目立って話ができない。場所、移動しよう』
亜紀の腕を組むと目で合わせてと訴える