零度の華 Ⅰ



亜紀との待ち合わせに遅れそうだったので急いで支度をした



××駅の前に行くと、亜紀らしい奴が立って携帯電話を弄っていた

随分と目立っているな


女の好奇の目が途絶えない




あたしも十分目立っているから何も言えない


あたしは亜紀に近づいた



『お待たせ』



ニコッと女らしくやって見せた


そのせいか亜紀はあたしを零(ゼロ)だと気づいていない



昨日の今日で女ということを理解できてないのか




『内野亜紀』


「……もしかして。……本当だったんですね」




やっと理解してくれたみたいだ


どうやら半信半疑だったようだな、あたしが女だったということを




「いいのですか?バラしてしまって」



あたしは亜紀に隠す必要はないと思い女だと明かしに来た

だが、素顔だけは見せてはおかない



『隠す必要ない。それより、ここじゃ目立って話ができない。場所、移動しよう』




亜紀の腕を組むと目で合わせてと訴える




< 291 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop