零度の華 Ⅰ



「じゃあさ~。何者かってことくらいは教えてくれる~?俺との約束でしょ~」


光華に入れてくれることで、あたしのことを教えるという約束を忘れている訳じゃない


だが、今ここで言う気はしない

お楽しみは取っておくものだ



『そのうち、教えてあげる。"すぐに教える"なんて一言も言ってないからいいよな』



作り笑いの鷹見の顔が歪んだ


あたしは梟達に背を向け、扉へと歩く



後であたしを止める者の声が聞こえるが、振り向くことなく屋上を後にした




翌日、日常となっている殺しを終えて帰ってきたあたしはテレビをつけてみる



〈_____________速報です。

S社の社長である……さんが殺された事件ですが、なんと……さんの奥さんが"零(ゼロ)"という殺し屋に頼んだとの情報です。

情報を提供してくれたのは息子の……さんです。

奥さんの……さんは容疑を否認しているそうです〉



アナウンサーの声が静かなこの部屋に響く



あたしは一度その場を離れ、シャワー浴び終えるとコーヒーの入っているマグカップを持って再び戻る



テレビの画面はアナウンサーの姿から、息子が取材を受けている姿へと変わる



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