俺を好きになってよ。
「ちょ、義母さん!?」
南が驚いたのにも無理はない。
明恵さんが涙を流していたからだ。
「…ばか……そう言われて泣かないわけにはいかないわ…っ」
「義母さん……」
明恵さんも色々考えてたのかな…。
距離をとる南に対してどう接すればいいのか。
どう接した方がいいのか。
明恵さんも悩んでたのかもしれない。
明恵さんは座る南の前に来て優しく包んだ。
「っ、私も…南を育ててきて良かったわ…」
「うん……。ありがとう…」
南は明恵さんの腕の中で微笑んだ。
「あ〜!おにーちゃんだけずるーい!!ボクも!ボクもぎゅーしたい〜!!」
「もー輝ったら〜!はい、輝もぎゅ〜!」
そのやりとりを見ていると自然と口元が緩む。
明恵さんと輝くんに抱きしめられている南が小さい子供のように見える。
…私も小さい頃お母さんとお父さんに抱きしめられてたなぁ…。
「凛月さん…といったかな」
「あ…はい!」
昔のことを思い出していると前に座っている南のお父さんに声をかけられた。
「…南は昔、笑う奴じゃなかった。…いや、"本当の"笑顔じゃなかった。…でも、君が変えてくれた」
「そんな…私は…」
「これからも息子をよろしく頼む」
「っ!…っはい!」
こんなに暖かい家族に出会えて…南に出会えて私は幸せで…。
これからも南のそばにいたいって思った。
…あ、そう言えばさっきから携帯なっていたような…。
「あああぁぁっっ!!!」
「なっ、何!?りっちゃん!」
「……家の手伝いするの忘れてた……」