24歳、恋愛処女
「彩夏がこのあいだ、落ち込んでたから。
昨日も理央に会って嫌な思いをしたんじゃないかって心配したけど、そっちは杞憂に終わったみたいだね」

「……ありがとうございます」

真人さんの言葉に感じる、小さな小さな棘。
前言撤回。
やっぱり怒ってるんだ。

 
通された個室、真人さんは向かい合ってじゃなくて、私の隣に座った。
いつも通り話してるはずなのに、少しだけ居心地が悪い。
真人さんが近いから、少し怒ってるように感じるからか。

「どうかしたの?」

銀縁眼鏡の奥から、真人さんが私の顔をのぞき込む。

「今日はちょっと、口数が少ない」

「そう、ですか?」

するり、真人さんの手が私の頬を撫で、自分の方を向かせた。
じっと私を見つめると、ふっと口元だけを緩めて笑った。

「もしかして、僕が怒ってるとでも思ってる?」

「えっと」
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