２４歳、恋愛処女

怒ってないとは思えない。
私の頬を挟む手。
じっと見下ろしてくる、瞳は笑ってない。

「ちゃんとわかってるんだ、自分が約束を破ったってこと」

「……はい」

怒ってる、なのに楽しそう。

「破ったのはデートだけ？
彩夏の初めては全部、僕のものだって云ったよね？」

「……えっ、と」

レンズの奥、私だけしか映してない瞳。

「名前、呼び捨てって。
敬語もダメだって、云われ、マシタ」

ゆっくりと手が離れ、真人さんはお猪口に入ってたお酒をくいっと飲んだ。

「そういうのは僕の趣味じゃないからいいや。
だけど、約束破った罰は受けてもらうからね」

お銚子に手を伸ばす真人さんに、慌ててお酌をする。
再びくいっと一息に飲むと、私に妖艶な顔でにっこりと笑った。

「日曜日。
楽しみにしていてね」

こうして私は楽しみのはずだったデートを、怯えて待つ羽目になったのです。