24歳、恋愛処女
お花を生けて戻ってくると、真人さんはいなかった。

「ありがとう。
真人にはちょっと、売店までお使い頼んだから」

台の上に花瓶を置くと、手招きされた。
傍に行くと、そっと手を握ってくる。

「真人はあなたに、無理をさせたんじゃないかしら」

まっすぐに私を見つめる目は強い力を帯びていて、お祖母さんは全部お見通しなんだ。
だから私は、首を横に振った。

「あの子は昔から自分の感情を隠すのがうまくて、ひとりにしとくのは心配だったから。
理解してくれる人を見つけて幸せになりなさいって意味で云っていたんだけど、どうも言葉通りに取ってしまっているみたいで」

ぎゅっと私の手を握るお祖母さんに、本当に真人さんのことを愛していて、心配しているんだって実感した。

「大丈夫です。
私は、その、真人さんを、……愛していますから」

まだ云い慣れないことを云うのは恥ずかしい。
熱い顔で俯いてしまった私の手を、お祖母さんがそっと撫でる。

「ありがとう。
真人を、よろしくお願いします」
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